2025年2月12日 (水)

演劇「日の丸とカッポウ着」を観る

 10日は東京・浅草九劇で演劇「日の丸とカッポウ着」を観てきました。1932年に大阪で誕生し全国組織になった「国防婦人会」の顛末を描いた演劇です。これを知ったのは9日付東京新聞の「社説」。「カッポウ着と戦争協力」のタイトルでこの演劇を取り上げ、そこに込められたフェミニズムの視点と戦争協力に組み込まれた歴史から何を学ぶかを論じています。硬軟とりまぜたテーマを「ですます」調で書き比較的柔らかいのが東京新聞の日曜の社説「週のはじめに考える」の特徴ですが、演劇が取り上げられるのはたいへん珍しいことです。読んで、これは観ておきたいと思いましたが席が空いていたのが10日夜だけだったという次第。連日満員だったようです。100席ほどの小劇場でしたが私が観た回も通路までびっちり埋まってました。

 内容については紹介した社説を見ていただければだいたいわかっていただけると思うので割愛(^^; 初めは素朴な思いから始まった主婦の民間運動が、国(陸軍)に取り込まれて国民統制の手段に変わってゆく(変えさせられてゆく)様には考えさせられましたし、怖いなという。。。ただ、初期の段階で国防婦人会が運動を大きくするためや、役人・軍人の妻で構成されていた「愛国婦人会」への対抗心から陸軍の後ろ盾を得ようとした時点で(芝居ではそう描かれている)運命は決まっていたようにも見えてしまいます。もちろん、歴史として後から見ているからというのもありますが。大阪vs東京、庶民vs上流階級という対抗心を周囲(そこには新聞も入る)が煽らなければ、もう少し違った結果になったかもしれないかなと思うのは甘いのかな。

 それと、本当のことを知らないことの怖さでしょうか。中国で本当は何が起きていたのか知らぬまま国防婦人会は活動していたわけで、これもまた知っていたらもう少し違った結果になったかもしれないかも、なのですが当時は情報統制で知る由もなく。。

 重いテーマでしたが、基本は大阪のおばちゃんが織りなす物語なので特に前半は大阪的なノリのコミカルな味付けで笑いどころも多数。役者さんもみなさん良くて、約2時間ぐいぐいと引き込まれる芝居でした。

 戦後80年の今年にこの演劇を観ることが出来て良かったです。やはり「戦前」にはしたくないですね。

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2025年2月10日 (月)

扉座サテライト公演「リボンの騎士2025」を観る

 劇団扉座の研究生の卒業公演である「リボンの騎士2025 県立鷲尾高校演劇部奮闘記」を今年も観てきました。6日から9日の上演でしたが私が観たのは8日の配役B楽日と9日の配役A・大千秋楽の2回。今年も配役違いのA・B2パターンによる上演でしたので両方セットということで。観るほうは役の違いによる演技の違いも観られて面白いのですが、演じる研究生はA・B両方の役を覚えなければならないので大変だと思います。

 今年はまた演出を少し変えてきました。歌のシーンがいくつか盛り込まれて、ミュージカル的要素も含んだ形に進化。また、劇中の生徒会総会のシーンがオンライン開催から対面開催に変わりました。もともと扉座の本公演では対面開催だったのが、新型コロナ禍における演劇の上演を「トライアル」する中でオンライン開催という形に変えてきた演出を研究生の卒業公演でも引き継いでいたのですが、世相を反映した形になりました。また、人員の関係で扉座本体より北村由海さんと大川亜耶さんという若手の巧者2人がスペシャルサポートで参加。この二人は流石としかいいようがないです。

 今年の公演はA・Bどちらも役がきれいにはまった感で甲乙つけがたい感じでした。毎年のことですが若手の熱気あふれる舞台には圧倒されます。そして、話の筋はわかっているのに毎年観たくなる芝居です。それは、細かな演出変更などもありますが、なんといっても卒業公演。ここからみな巣立っていくわけですが、最後にすべてをぶつける感が伝わってくるんですよね。この座組での上演は2度とないわけで。もっとも演劇の世界では再演されることがあってもキャストがすべて同じ顔触れになることはめったにありません。そういう儚さを持ち合わせているのも心を揺さぶられるひとつなのかなあと思います。研究生のみなさんに幸あれと願います。

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2024年12月 6日 (金)

劇団扉座公演「歓喜の歌」再演を観る

 先月30日に杉田あきひろ・ソワレジョイントライブを観たことを綴りましたが、終演後に新宿へ移動。夜は紀伊國屋ホールで劇団扉座の公演「歓喜の歌」を観てきました。この芝居、2016年11月に上演されたもので今回は再演。私は初演を観ているので概要説明を省こうとこの雑記帳を見返したら、なぜかこの公演に限って観劇記を綴ってませんでした。うーん、どうしてだか思い出せない(^^; 

 市民会館の職員が市内の名前のよく似たコーラスグループの大晦日のホール予約をダブルブッキングしてしまったことから起こる騒動に地元商店街の歳末セールでの福引で起きたトラブルを絡め、ホール利用で対立したコーラスグループが最後は偶然にも助けられて和解し合同コンサートで感動の大団円に至る、と文章で端折って綴ってもなかなか伝わらないと思いますが(^^; 立川志の輔さんの落語「歓喜の歌」が原作ですので基本的に笑い中心の娯楽作です。初演も面白かったのですが、再演でさらにパワーアップしてました。やらかした会館職員を初演では六角精児さんと酒井敏也さん(客演)のコンビが務めていましたが、今回は劇団員の高木トモユキさんと犬飼淳治さんを起用。初演のキャラの濃さは際立っていてそれも面白さの要素ではありましたが、今回のキャスティングでは「実際にいそうな人」な感じになり、違った面での面白さがありました。そのほか演出が変って笑いの要素をあれこれ突っ込んでくるので、客席は笑いっぱなし。さらに裏金とか隠蔽といった時事ネタや世相も盛り込んでいるは扉座主宰の横内謙介さんならではで、再演とはいいつつ初演そのままでは全くないリニューアル版になっていました。話の展開上、歌唱シーンも盛りだくさんでしたが歌も上手いし、演劇でありながら「歌っていいなあ」と思う経験はなかなかないかなと。客席盛り上がりました。盛り上がったといえば、私の観た回にはなんと、初演で会館職員だった六角さんがサプライズ登場。商店街の福引を引く列にしれっと入ってきてアドリブをかまして去っていきましたが、客席大拍手でした。

 今回の公演は12月1日が千秋楽でしたので、その前夜ということで終演後には山中崇史さん責任進行の恒例アフター企画「ラクイブナイト」も。芝居の筋とは全く関係のない余興ですが劇団員の素顔がわかったりしてこれも楽しみだったりします。今回は「怖かった話」の披露大会で六角さんも参加。客席は爆笑の連続でしたが内容は自粛しておきます。劇団員は濃い面々が多いなあと(笑)

 そうそう、ロビーでは芝居本編のシーンを再現したかのようなグッズ購入者対象の福引も開催していて、しかも芝居で演じていたキャストが本当にそれをやっているという滅多に見られない光景が。ガラガラで当たりが出るとハンドベルが鳴り、演劇のロビーでこんなに賑やなことはないだろうと、こちらも楽しかったです。芝居もロビーも観に来た人を楽しませようという気に溢れていました。

 こんなに楽しい芝居、リピートしたくなるのですが公演期間が短かく都合が付いたのが1回のみだったのが残念です。またいつか年末にやって欲しいですね。

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2024年9月14日 (土)

「ドリル魂2024」を観る

 きのう13日は東京・すみだスタジオパーク倉で公益社団法人日本劇団協議会が主催・制作の「ドリル魂2024」を観てきました。新進演劇人育成公演と銘打っており、キャストはほぼ若手で、見守り役?にベテランを配する布陣。ということもあって客席も若い方が多めでした。フライヤーには”建築作業そのものから生まれた「愛とガッツ」のミュージカル!今、ここに蘇る!”というコピーが踊っており、再演ものですが私は初見。建築作業でミュージカル?どんな感じになるのかなと楽しみにしておりました。作・作詞・演出が扉座の横内謙介さんなので、なんとなくこうなるかなというイメージは持っておりましたが、想像を超えました!

 ステージには鉄骨の足場が組まれ、本物のドリルが唸りを上げ加工工具が火花を散らす、まさに工事現場。そんな中で、ミュージカルですから歌もダンスもあるし、体操の演技のようなアクロバットもあり、タップダンスもあり、中国の雑技団がやりそうな曲芸まで。もう見せられるものはなんでも見せるというてんこ盛り状態。要所要所で客席から拍手が出ていました。先代社長の若い息子が現場の頭を務める建設会社「轟組」に起きるエピソードをつないだオムニバスですが、エピソードに社会性があったり時事性があったりするのは横内さんらしいところかなと。ミュージカルらしく基本的には派手な演出でエンターテインメント重視ですが、それだけではないぐっとくるところがありました。そして若手のキャストが熱い!こんなミュージカルがあるのか!と、なんともすごいものを観たという感じ。2時間休憩なしの公演があっという間に感じました。ちなみに会場入口から客席までの通路にも工事現場にあるような「安全通路」なんて札が掲げられていたりして、ステージ以外のそういう細かいところにもこだわっているところも含めてとても面白かったです。

 ということで観劇をおすすめしたいところですが、公演があす15日までのうえに、チケットが完売だそうで。。。キャストのみなさんがケガなく千秋楽を迎えられますように。

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2024年7月28日 (日)

とあとあ第4回公演を観る

 7月26日は藤田朋子さんと小林綾子さんのユニットtoa-toaの第4回公演を、東京・東新宿のPetitMOAで観てきました。これを書くにあたりタイトルではとあとあと表記しました。ココログのイケてない仕様でtoa-toaと書くと大文字に強制変換されてしまうのがどうにもしっくりこなくて、どうせ正確に表示されないならこっちのほうがいいかなと。
 7月の開催なので「タツとフミヅキの巻」というサブタイトルが付いていましたが、PetitMOA入口に掲げられていたものはなぜか「タツとムツキの巻」。第3回のものと取り違えたのでしょうか(^^; 昼夜2回公演でしたがどちらも完売の盛況。私は夜を観ました。

 1幕は短編の朗読劇と音楽。筒井康隆さん作の「塩昆布まだか」はコメディ。客席からはちょいちょい笑いが出ていましたが、老いるとこうなっちゃうのかなあ(^^; 歌は、国際的な商業運動会(←登録商標は避けました)パリ大会の開催と、越路吹雪生誕100年にちなんでシャンソンナンバーから「ラストダンスは私に」。歌は朋子さんでアコーディオン演奏はいつもの桑山哲也さん。綾子さんはハーモニカをがっつりと入れて良い感じ。桑山さんのソロ演奏コーナーは、パリ大会の開会式で演奏が予想される曲のメドレー。タイトルにパリが付く曲を集めて、さらにバラ色の人生、愛の賛歌を演奏しましたが、実際の開会式では愛の賛歌が歌われていましたね。

 2幕は長編の朗読劇。向田邦子さん作の「眠り人形」は、かつてTBSテレビの東芝日曜劇場で放送され、舞台にもなった作品だそうですが、それを朗読劇用に書きなおしたとのこと。2人で出来る作品を探していたところ勧められた本作を読んでみたら思いのほか登場人物が多い、ということでゲストに矢田政伸さんを加えて3人で進行。作品を理解するうえでのキーワード、社会背景を事前に説明してから始まったので情景が分かりやすかったです。きょうだいの関係を軸に、お互いに事情を抱えた姉妹の状況が悪いほうに進んでいく息詰まるような展開が、終盤に急転直下で大団円を迎えるという、まさに昭和のホームドラマといった感じで、その世界にずっぽりと入って聞き入りました。素晴らしかったです。客席からは大拍手。

 終演後は朋子さん、綾子さん、桑山さんが客席におりてきてファンの方と面会してました。私は場数は踏んでますが面識があるわけではないのでそんな交流を呑みながら見ているだけでしたが、こういう雰囲気は好きなんですよね。toa-toaの公演はまたやりたいとおっしゃっていましたが、お二人の仕事の都合で次回は来年になりそうとのこと。またの機会を楽しみにしています。

 今回も拡散用の撮影OKタイムがありましたので掲載します。

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 1幕の冒頭。物販で作ったオリジナルTシャツを着ています。ということは、続きますよね!

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2024年6月10日 (月)

劇団扉座「ハロウィンの夜に咲いた桜の樹の下で」を観る

 きのう9日は劇団扉座の新作「ハロウィンの夜に咲いた桜の樹の下で」を観てきました。会場は扉座のホームと言える東京の座・高円寺。小ぶりなハコでステージが近く、客席に傾斜もあって見やすいのがいいですね。

 扉座の芝居に外れはないというのが私の経験ですが、今回の作品は理屈抜きで面白いです。ハロウィンの夜に記憶を無くすほど泥酔して帰った自宅で起きるあれやこれやを描く言ってみればドタバタ劇なので、キャストの見た目とかキャラクター設定とか展開がいちいち面白いのです。そして、いくつかの手がかりから断片的に記憶を取り戻して、ハロウィンの夜に何があったのかを解き明かしていくという、謎解きの要素もあります。そして単なるドタバタ劇に終わらないのが扉座、というか主宰の横内謙介さんで、人生の転機を迎えた中年世代の悲哀なんかも盛り込まれています。ラストにほのかな希望のようなものが見えてくるのも横内さんらしいかな。

 まあ、私がごちゃごちゃ書かなくても、すでに演劇のサイトがレポを出していますので、そちらを参考にしてもらったほうが良いかなと。ネタバレ度・小ならステージナタリー、ネタバレ度・大ならシアターテイメントNEWSですね。

 今作は主役がテレビドラマ「相棒」でおなじみの山中崇史さん。上記のレポの写真にもありますが、テレビでは決して見られない姿が見られます。扉座初心者、というか演劇初心者にもオススメです。ぜひ劇場へ。6月16日までです。公演情報は扉座のサイトでどうぞ。

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2024年3月 6日 (水)

扉座大人サテライト公演「ご長寿ねばねばランド」を観る

 先週末の2日、すみだパーク演劇部・扉座大人サテライトの公演「ご長寿ねばねばランド」を東京・すみだパークシアター倉で観てきました。2月には同じ場所で扉座サテライト公演「リボンの騎士」を観ていますが、扉座サテライト(=研究所)が新人育成でメンバーは若者であるのに対し、扉座大人サテライトは50歳以上が対象の「大人の部活動」がコンセプトの演劇塾となっており対照的。扉座大人サテライトとしては初の劇場公演ということや、事前に愛読紙である東京新聞に紹介記事が出たこともあり、どんなものかなという感じで出かけたのですが。。

 いやー観てびっくり。「大人の部活動」とは思えないほど本格的でクオリティが高い!みなさん役者目ざしてるの?と思うぐらいで、とても良かったです。先の新聞記事によればメンバーには市民劇団などでの演劇経験者もいるとのことですが、それにしてもこれだけの芝居ができるというのはすごいなと。お金の取れる芝居です。もちろん木戸銭払って観ているのですが(微笑)。

 物語の内容は扉座のサイトに出ていますが、基本的に老人が活躍する楽しい、愉快な話。ただ終盤には老いの問題などが描写され、ほろ苦い場面も。これから進むであろう超高齢化社会はどうあるべきかといったことが頭をよぎったりと、楽しいだけではない印象深い芝居でした。ちなみに客席は大人サテライトのメンバーと同年代ばかりかと思いきや、若い方も。出演者の家族親族かもしれませんね。終演後は大拍手でした。

 本気の芝居、一見の価値ありです。Aチームの上演は先週で終わり、今週はBチームが7日から10日まで上演します。お近くの方はぜひどうぞ。

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2024年2月28日 (水)

扉座サテライト「リボンの騎士2024」を観る

 もう2週間以上前のことになりますが、2月8日から12日まで扉座サテライト(劇団扉座の研究所)のメンバーによる卒業公演「リボンの騎士2024ー県立鷲尾高校演劇部奮闘記」が東京・墨田区のすみだスタジオパーク倉で行われていて、私も2公演観てきました。なんでこんな時期に綴ってるのかというと、ちょうどこの公演期間にあった2月前半の連休は、真璃子さんのライブやア・ラ・シャンソンのライブがあり私にとって盛りだくさんだったので、そちらを先に綴って後から・・・と思っていたらだいぶ間が空いてしまったという(^^;

 卒業公演の演目が「リボンの騎士」に固定されてからずっと観ていますが、昨年は配役違いの6チームによる公演だったのが、今年はA・B2チームによる公演となりシンプルになりました。今年は研究生が少なめだったからかな? でも芝居の熱量は高く、個性的なキャラクターが繰り広げる若さあふれるパワフルな芝居は2時間半の上演時間を長く感じさせないものでした。演目は同じでもシーンによっては新たな演出になっていたり、キャラクターの味付けが変化していたり、またそれもチームによって違っていたりと、新鮮に楽しめました。芝居はこうやって進化していくのかな。私が観たのは10日昼のAチームと12日昼のBチームでしたが、どちらも甲乙つけがたい芝居でした。卒業後、メンバー全員が芝居の道に進むわけではないようですが、研究所で得たものを糧としてそれぞれの道で活躍されることを期待しています。

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2024年1月28日 (日)

toa-toa 第3回公演を観る

 きのう1月27日は藤田朋子さんと小林綾子さんのユニットtoa-toaの第3回公演を、東京・東新宿のPetitMOAで観てきました。第1回、第2回と観ていますので、私あてにお誘いのメールが来るのです♪
(注・ブログタイトルは大文字でTOA-TOAと表示されていますが、これはココログの仕様で小文字が大文字に強制変換されてしまうのです。ご了承ください)
 「タツとムツキの巻」というサブタイトルが付いていて何だろうと思ったのですが、辰年で睦月ということですね。今回はこれまでの平日開催と異なり、初めての土曜日。私はマチネ(昼公演)を観ました。小さいハコはぎゅうぎゅうの満員。

1幕は短編の朗読と音楽。「伝票あらそい」は筒井康隆さん作のコメディで、客席から笑いが。上品な奥様同士が途中で口論になっていくのですが、リハではお二人とも上品で、もっと激しくと桑山哲也さんがダメ出ししたとか(微笑)。本番ではしっかり口論になってました。歌は「見上げてごらん夜の星を」。桑山さんのアコーディオンにのせて朋子さんがVo、綾子さんはハーモニカとハモり。能登半島地震に思いを寄せて選んだそうです。そのあと桑山さんのアコーディオンのソロ演奏。クロマチックアコーディオンが生きる速いワルツの演奏でした。恒例の前説トークもウケてました。

2幕は長編の朗読。「やさしいまなざし~ミチとテル、そして、みすゞとふうちゃんの物語~」は、金子みすゞさんの生涯を、詞をちりばめながらたどったもので、オリジナル作品。1幕の短編とはうってかわって、マイクを使わず静かにシリアスに。幕の裏では桑山さんが劇伴をしていて、これもまたいい感じに。金子みすゞさんは恥ずかしながら名前ぐらいしか存じ上げなくて、どんな方だったのかこの朗読で垣間見ることができました。ラストが切ないですが上演後は大きな拍手が。

 それにしても、ネームバリューのある役者さんがこんなに小さくて最前列ならステージに手が届くような近さのハコで公演をしているって、奇跡のように思います。お二人の「こんなことをしたい」という思いの強さを感じます。次は8月ごろを予定しているということです。あれ、8月って朋子さんのバースデーライブもあるんじゃない?

 拡散用の撮影OKタイムがありましたので、遠慮なく掲載します。

 こちらは1幕。春を先取りしたような明るい衣装。

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 お披露目でくるりと1周してましたので、うしろも。

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 2幕はうってかわってシックに黒。物語に集中してもらうためでしょうか。

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公演時間は2時間。素敵で濃密な空間でした。また行きたいと思います。

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2023年12月 5日 (火)

劇団扉座「二代目はクリスチャン」再演を観る

 2日の夜は劇団扉座の公演「扉座版・二代目はクリスチャン」を観てきました。2021年に初演された芝居ですが、再演ではいくつかの変更点がありました。まず会場が演劇の聖地・紀伊國屋ホール。つかこうへい原作の芝居を紀伊國屋でやるというのは演劇人にはとても大きなことなのだろうなと。そして、キャストのうち主役が扉座のベテラン・伴美奈子さんに変りました。今回、扉座主宰の横内謙介さんが今回の再演を「伴美奈子スペシャル」と称して、とにかく見て欲しいと事前にネットで力説していたのですが、伴さん確かに良かったです。

 初演の主役は石田ひかりさんだったわけですが、石田さんはいかにも本来ありえない人がヤクザの女房になってしまった感を前面に出した感じのキャラクターでした。伴さんはキャラクターの味付けを変えてきて、20年の刑期の間に肝が据わったような感じ。とにかくかっこいいのです。方向性が違うのでどちらが良いという話ではないですが、細かな演出の違いもあって「モア・パッション モア・エモーション」というフレーズには合っていたような。伴さんの演技は扉座の公演や今年1月に客演した「ほおずきの家」とかで観ていますが、穏やかで品のある感じの役柄が多かったのです。今作のような強い役柄は新境地みたいな感じに見えましたが、とてもよくはまっていました。すごい役者さんです。

 芝居そのものは再演ですから筋書きはわかって観ていましたが、扉座が(というか横内さんが)そのままやるわけがなく、時事ネタを織り込んでアップデートしていました。こういうのがあるから再演も楽しく観られますね。つかこうへい原作らしい荒唐無稽なストーリーにシリアスな物事の本質を問うようなことも織り交ぜで、笑いあり涙ありの熱量の高い芝居でした。

 私が観た2日夜は千秋楽の前ということで終演後に恒例企画の「ラクイブナイト」つき。山中崇史さん責任進行の余興で、劇団員のクイズ大会などをやることが多いのですが、今回は主役の伴さんとのアフタートークショー。意外にも扉座でアフタートークは初めてなのだとか。伴さんは今作について「大変でした」と語っていましたが、そうでしょうねえ。山中さんからの73の質問に答えていくという企画では、けっこう考え込む質問も多く、誠実というかおっとりというか、芝居とは違う人柄を見ることができて面白かったです。ちょっと長かったですけれどね(微笑)

 公演には扉座研究所の面々もアンサンブルで出演していましたが、年が明けて2月にはその研究所の卒業公演「リボンの騎士2024」があります。こちらも楽しみです。

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