ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2024を振り返る(3)
5月3日から5日まで開催されたクラシックフェス「ラ・フォル・ジュルネTOKYO」(以下LFJ2024)の振り返りのシリーズ、いよいよ最終日の5日に至ります。公演番号は公式サイトと照合ください。
◆公演346 鍵盤楽器のプロフェッショナル、そのルーツ
トッカータの世界=「バロック誕生」
ガラス棟のホールG409というキャパの小さな会場でのチェンバロ演奏の公演です。めったに聴けない楽器なのでダメ元で先行抽選販売に応募したら運よく当選して聴くことがが出来ました。出演は世界的なチェンバロ奏者の中野振一郎さん。会場は会議室みたいなところですが、燭台を模した電灯なんかも置いてあって良い雰囲気。中野さんが17世紀へご案内しますといってコンサートがスタート。チェンバロはピアノと比べると音の小さな楽器ですが、小さな会場で間近で聴くとはっきり聞こえて良いですね。トッカータという様式が生まれてバロックへつながっていく過程を登場順に弾いていく音楽の歴史講義のようなプログラムでしたが、中野さんの解説がいちいち面白くて客席から度々笑いが。わかったのは、トッカータはテンポも調も決まっていないような自由な演奏だったのが、だんだんかっちりとしてきてバロックになっていったということ(ざっくり過ぎ・笑)。小さな部屋で観るほうも緊張するかなと思った公演でしたがとても楽しい公演でした。
◆公演315 ミチヨシ&山根VS伊福部の伝説、再び!
なんのこっちゃというタイトルですが、井上道義さんの指揮、新日本フィルの演奏による伊福部昭さんの作品を演奏するというプログラム。LFJのファイナルコンサートなので切符を取りました。冒頭に井上さんのMCがあり、ゴジラの一節が出てきますからといってその部分だけ実際に演奏してみせ、楽しみにしてくださいと。これで客席が湧きました。そして「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏狂詩曲」をソリストの山根一仁さんとともに。確かにゴジラの一節が出てきました。次の曲「シンフォニア・タプカーラ」もそうですが、私は初見。なんですが、劇伴みたいな音楽で初めてでも聴きやすいのです。そして高揚感があって心躍る感じ。伊福部さんのことはよく知らなかったのですが、映画音楽などを多く手掛けられているそうで、納得。演奏が終わると客席大拍手。長いカーテンコールが続き、客電が点いてもなお拍手はやまず、袖にいたLFJの芸術監督ルネ・マルタン氏を引っ張り出す井上さん。その前からぽつぽつとスタンディングオベーションをする人が現れていましたが、ここで1F席は目視の範囲でオールスタンディングに。大興奮のエンディングになりました。
井上さんは今年で引退することを表明しており、LFJで振るのはこれが最後とのことですが、まだまだやれるのではというぐらいエネルギッシュな指揮ぶりでした。日本初開催からLFJにかかわってきた井上さんのラストステージということで興奮とともに感慨深かったです。
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ということで3日間を、ほぼ自分のために(^^;振り返りました。個人的には今年聴いたのは有料公演は4つと少なめでしたが、どれも「当たり」で満足感は高かったです。歳を重ねたせいか有料公演を詰め込まず周辺の無料公演も含めてゆったり楽しむのも良いなと思った次第です。 フェス全体の感想としては、LFJ2024はコロナ禍での中断を経て概ねコロナ禍前のスタイルを取り戻してきた感じです。まだまだ海外アーティストの出演が少なく、特にオーケストラは全て国内団体だったのはコロナ禍前との大きな違いですが、逆にこれまでLFJで聴く機会の少なかった国内オケが聴けるという点は悪くないようにも思います。経済状況の違いもありスタイルや規模が全てがコロナ禍前には戻らないのかもしれないけれど、気軽に気楽にクラシックが楽しめるフェスとして長く続いて欲しいなと思います。
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