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2019年12月 3日 (火)

扉座公演「最後の伝令」を観る

 先週は、劇団扉座の公演「最後の伝令 菊谷栄物語 1937 津軽~浅草」を観てきました。

 菊谷栄って誰?ってところから始まってしまう訳ですが、エノケン(榎本健一)一座の座付き作家で、レビューを書いていた方だそうです。舞台の設定は1937年(昭和12年)、日中戦争が始まった年です。

 物語となっていますが、芝居で描かれていたのは、菊谷が召集されてから出征するまでの、ほんの数日間。それを、起伏のある筋書きで濃密に描いた作品でした。浅草の一座から何も言わず忽然と姿を消した菊谷が召集を受けて故郷の青森に旅立ったとわかった一座の座員が、津軽出身の新人ダンサーに手紙などの届け物を渡す役を頼む。青森で壮行会の二次会にいた菊谷のもとに新人ダンサーがたどりつくが、その夜はいろいろと事件が起こり。。。

 扉座らしく笑いのポイントも多数あり、また浅草の華やかなレビューのシーンも盛りだくさん。そういう楽しいシーンと、青森の出征前のひとときという重苦しいシーンが交錯して、いろんな感情が沸き起こり、心が揺さぶられる芝居でした。とにかく笑ったり泣いたりが忙しくて。。。私、涙腺は固いほうですが、本当に涙が出ました。切なくて切なくて。終盤になるとあちこちからすすり泣きの声が聞こえてきて。

 時局柄、本音を隠して振る舞わざるを得ない人々。迫りくる統制。東北地方の苦境。貧困と人身売買。兵隊と言えども人の子。レビュー作家の矜恃。。。

 キャストの劇団員もみなさん素晴らしかったですが、これを書き始めるととてつもなく長くなるので(笑)、客演に絞って。菊谷の友人で地元紙の記者役の草野とおるさん。インテリっぽさが見え隠れするような、いい味を出してました。キャストながら津軽弁の指導も行ったそうですが、ネイティブでない私には完成度がよく分かりません(^^; もう一人の客演はAKB48・チーム8構成員という横山結衣さん。青森へ走る新人ダンサーという重要な役どころでした。扉座主宰の横内謙介さんが見いだしてキャスティングしただけあって、歌もダンスも芝居もなかなかのもの。劇団員と堂々渡り合っていました。客演扱いですが実は元劇団員の柳瀬亮介さんは芝居だけでなく見事なタップダンスも披露。かっこよかったです。

 

 今回の公演、とにかく短かったのです。厚木公演が2日で2回。東京公演が5日で7回。あっという間に終わってしまいました。再演して欲しいなあ。そして、もっと多くの方に観て感じてもらいたい。そんな芝居でした。

 印象深い台詞があります。『このセリフもそろそろ使えなくなるだろう。こうして大事なセリフが一つ一つ消されていくんだよ』

 そんな世の中にしてはいけない。そう思います。

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