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2019年9月27日 (金)

松方コレクション展

 今週月曜で閉幕してしまった美術展なので今さら感満載なのですが、やはり印象深かったので綴っておきたいと思ったのが国立西洋美術館の「松方コレクション展」です。川崎造船所や神戸新聞社の社長を務めた松方幸次郎の収集した美術品は西洋美術館の礎になっており、開館60周年記念と銘打って散逸した美術品なども集めて開かれた美術展でした。

 なんといってもプロローグを過ぎて入った第1室が圧巻でした。高い天井の大広間でしたが、展示方法がユニーク。展覧会の絵画が横一列に並んでるものですが、高い壁を生かして絵が2段、3段と並んでいました。したがって壁一面にこれでもかというほど絵がずらり。もうここだけでお腹いっぱい、みたいな(褒め言葉です)。予習として見ておいたBS日テレ「ぶらぶら美術・博物館」の解説では、画廊をイメージした展示にしたということですが、なるほど。また、動線的にもうまくできていているなと思いました。横一列の展示だと観覧者も壁に沿って横に移動しながらの鑑賞となって行列がなかなか進まないし、かといって後ろからではよく見えないし、というのが「あるある」だと思いますが、高いところにある絵は壁から離れないと見られないため必然的に横移動だけでなく前後移動も生じ、全体的に人の動きがあって見やすかったです。第2室以降も充実の展示が続きますが、絵画だけでなくロダンに代表されるブロンズ像なども収集していたことがわかります。いやはや、なんともすごい質量のコレクションです。松方氏が美術品を買い集めていたころ、パリでは「松方が来ると画廊が空になる」と言われたそうですが、その大人買いっぷりが目に浮かぶようです。

 個人のコレクションはその趣味が反映されて特定の画家だったり流派を系統立てたりしたものになるものですが、松方コレクションは印象派の絵画が中心ではあるものの系統だった収集ではないように見えます。多くはロンドンやパリなどの画廊で売られていた作品や、作家から直接買い付けたものだったりで、当時の欧州でナウい絵をごっそり買った結果として印象派が中心になった、というような感じに見えます。松方氏はもともと絵に興味は無かったとも言わているのですが、ではなぜ絵を集めたのか。「日本人に本物の西洋画をみせてやりたい」という言葉が残っています。最終的には美術館を開設して公開する構想も持っていました。西洋画とはこういうものだ、と見せるならば特定の流派にとらわれずに様々なタイプの作品を作例的に見せたい、ということだったのかなと個人的には想像しましたが、実際のところはどうなんでしょうねえ。それにしてもなぜ絵に着目したのだろう・・・そのあたりが美術展の解説では触れられていなかったのが、ちょっぴり消化不良だったかな。

 それから、松方コレクションには戦争の影がつきまとっているところが、内容とは別に印象的に感じます。そもそも買い付けの元手になったのは、第一次世界大戦下で不足していた船を高値で売って得た莫大な利益。それが、戦争終結による不況に金融恐慌が追い打ちをかけて川崎造船所は経営破綻し、債務返済の一環として日本に輸送済みだったコレクションは売り立てられて散逸。フランスで保管されていた分は第二次世界大戦下で敵国人資産としてフランス政府に接収。戦後になってそれが返還されて西洋美術館が開館し、やっと松方氏が目ざしたことが実現したという経過は、ドラマチックの一言では片づけられないように思います。

 

 とても充実した美術展で見ごたえがあり良かったですが、当然のことながら展示作品の多くは西洋美術館に収蔵されているもので、常設展でも見ることができる作品があります。どうしても日本の美術館は企画展中心になっている感が強いですが、常設展にも注目していきたいですね。

 * *

 松方コレクションの話からは通常、派生しないと思いますが、松方幸次郎は日本で最も早い時期に川崎造船所に8時間労働制を取り入れた人でもあります。神戸ハーバーランドの一角には「8時間労働発祥の地」の碑があります。これには異説もありますが、重工業では最初期と思われます。ちょうどこの頃、国際労働機関(ILO)で8時間労働制が採択されています。松方氏が西洋から持ってきたのは工業技術や絵画だけではなかったのです。松方氏が争議の交渉で8時間労働制導入を表明したのが1919年9月27日。ちょうど100年前になります。
(参考: 日経新聞の記事 神戸新聞の記事

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2019年9月25日 (水)

9月25日発売のCDから2題

 きょう9月25日、すでに告知されているように河合奈保子さんのライブアルバム4タイトルがタワーレコード限定商品として復刻発売となりました。コロムビアからの一般発売ではないためか、奈保子さんのリイシュー公式サイトであるNaoko Fan Meetingやコロムビアの奈保子さんのページでも紹介が淡泊ですね(^^;

 タワレコからは注目アイテムとしてページが立ち上げられています。もう少し詳しい解説は個々の作品のページに書かれていますが、それによると
 ・CD-BOX「NAOKO LIVE PREMIUM」のライブアルバムを紙ジャケ仕様のままバラで発売
 ・同一のマスタリング音源を使い、収録曲も同一
となっています。
 ということで、すでに「NAOKO LIVE PREMIUM」をお持ちの方にとっては、規格品番が違うだけで全く同一のものとなりますので、改めて入手する動機付けは難しいでしょうね(^^; 私も今回ばかりはさすがに購入予定はありません。

 とはいえ「NAOKO LIVE PREMIUM」は2011年時点でほぼ店頭では見かけない状態となっていて、現在ネット通販では中古品に目の玉が出るような値付けがされています。それにFMおだわら「午前0時の歌謡祭」オーガナイザーの濱口英樹さんがおっしゃるように、奈保子さんの真骨頂はライブステージ!ですから、こうした状況の中で「新品で」「妥当な価格で」「単品で」購入できるようになったことは意義深いことだと思います。当時BOXに手が届かなかった方、迷っていて買い逃した方、最近になって奈保子さんを再発見した方、この機会に如何でしょうか。


 もう一つ、同日に発売されたのがCD-BOX「作編曲家 大村雅朗の軌跡 1976-1999」です。こちらは一般発売商品ですが、タワレコにもページが立ち上がっています
 大村雅朗さんの作・編曲の作品をまとめた4枚組BOXですが、奈保子さんの楽曲からは「エスカレーション」が収録されています。
 こちらのBOXを監修した梶田昌史さんは、今月のFMおだわら「午前0時の歌謡祭」にゲスト出演した折りに、最初に大村さんに興味を持ったきっかけは奈保子さんのアルバム「ハーフ・シャドウ」であったと述べられています。特に奈保子さんのファンだったわけではなく、YMOが好きだったつながりでシンセの松武秀樹さんの仕事を追いかけている過程で貸しレコード屋(!)で「ハーフ・シャドウ」に出会い「エスカレーション」「UNバランス」に衝撃を受け、そのアレンジャーが大村さんだった・・・ということなのですが、ちょっといい話じゃないですか?(意見や感じ方には個人差があります)
 こちらは完全限定生産盤とのこと。入手したい方は定価で買えるうちに買っておかないと「NAOKO LIVE PREMIUM」のように高騰しそうですね。

 そうそう、どちらの商品も消費税8%で買えるのは今月中。注文しても品切れなどで10月以降の受け取りになると10%になるようです。いずれ買うつもり、という方は今が買いですね。

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2019年9月19日 (木)

驚きの猫森集会Cプログラム(1日目)

 昨9月18日の夜は、この時期恒例の谷山浩子さんのシリーズライブ「猫森集会」のCプログラムを観てきました。場所は東京・新宿のこくみん共済coopホール スペース・ゼロ。例年と同じ場所なのですが全労済ホールから名前が変わりました。谷山さんも冒頭のMCでちょっと戸惑ってましたね(微笑)。

 Cプログラムはすべて客席からのリクエストで曲が決まるオールリクエスト企画。ということで、ゲストミュージシャンは並の方では務まりません。今年のゲストはベーシストの佐藤研二さんですが、いやすごかったです。なんとオファーを受けてから半年かけて谷山さんの全アルバムを聴き、耳コピで譜面に起こし、そのために自身のライブも少しセーブしたというのです!この経緯がMCで披露されると場内大喝采。私の記憶ではそんな仕込みをしてきた人を見た記憶がないです。これほど一人のアーティストの音楽にどっぷりつかったことはないとおっしゃってましたが、そうでしょうねえ。

 仕込んできただけあって佐藤さんの演奏はしっかり決まっていてかっこよかったです。谷山さんが忘れかけてる曲(歌詞カードしかない曲)なんかでは谷山さんが佐藤さんにコード進行を確認するといった一幕もあって、仕込みの成果が大活躍のライブでした。ただ、オールリクエストといえばゲストが知らない曲が出てきて、そこをどう乗り切るかというのを見るのも醍醐味のひとつであったりするので、それが見られなかったのは少々淋しい気も(爆)。自分で言うのも何ですが、リスナーとは勝手なものです(私だけ?)。

 佐藤さんは仕込みを万端整えてきたのですが、肝心の谷山さんは風邪を引いたそうで喉の調子がよろしくない状態であることを詫びてました。そして「静かな曲をリクエストして~」みたいな逆リクエストも(笑)。ということで出たリクエストはこうなりました。

Nekomori2019_c1jpg

 概ね白系で静かめな曲が揃いました・・・「ハサミトギを追いかけて」以外(微笑)。今回は本人セルフカバーのない提供曲のリクエストもなかったので、佐藤さんは全て仕込みで対応できたのはラッキーでしたね。いつもはクセのある曲のリクエストがあるものですが。私もそれを狙っているのですが、今年もリクエスト権は当たらず。。。2つ隣の席は当たったんだけどなあ。。本当に猫森でリクエストを出すのは遠い道のりです。それでもやっぱりCプロって楽しいんですよね。喉が不調だったにもかかわらず、しっかり歌いきった谷山さんにも大拍手です。

 * * *

【追記】後日、Cプロの2日目の曲目はどうだったのかな?と谷山さんの公式サイトを見たら、なんと翌日以降の猫森集会3公演が全て中止となっていました。医師の診断で発声禁止の指示が出たということで。。。そうなると「歌いきって大拍手」とも言えなくなってきてしまいますねえ。Cプロ1日目の奮闘がこじらせていたとしたら・・・ちょっと複雑な思いです。

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2019年9月17日 (火)

TEXLYNXライブ@稲毛

 9月16日の夜は、千葉市稲毛のライブハウスAPOLLOでTEXLYNXのライブを観てきました。以前、鳥取県米子で観たことを綴りましたが、そのときのライブが良かったので、また機会があればと思っていたのです。

 立ち見も出る満員御礼状態でライブスタート。ライブハウスらしく休憩を挟む2部構成で、オリジナルナンバーを中心にカバーも少し織り交ぜて進行。客席はライブハウスの常連さんとおぼしき方が多かったようですが、どこか懐かしい良きアメリカを思わせるごきげんなサウンドに大盛り上がり!TEXLYNXは稲毛初上陸ということでしたが、大成功でした。いやー、良かった良かった。ベーシストの小原礼さんがカホンを叩くなんて超レアなものも聴けました。なんでも急遽決まったことだったそうですが、さらりとやってしまうところがレジェンドですねー。メンバー紹介では「レジェンドでもこのバンドでは新人です」と紹介されてましたが(笑)。後から加入したので新人扱いなんですね。

 さて、千葉県といえば先週の台風15号で大きな被害が出ており、店のマスターやこのライブの企画者からの挨拶でもその話は出てきました。音楽で元気にしていきたい、そしていま大変な状況で頑張っている方がたくさんいるので、ということで募金バケツも用意されていました。私もドリンクや物販の釣り銭を少ないですが入れてきました。
 被害が大きいのは県東部や房総ですが、ライブハウスのすぐそばも実は、こんな状況でした。
 Inage
 稲毛全体がこうなっているわけではなくて、老朽化していた建屋に被害が出たのだと思いますが、それでも台風のすさまじさを感じさせる状況でした。

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2019年9月16日 (月)

伊集院光とラジオと生活情報と

 関東地方を中心に大きな被害の出た台風15号の襲来から1週間が経ちました。千葉県では今も多くの地域で停電が続き、全面復旧の見通しは9月27日と言われ、商用電源の停止に起因して断水や携帯電話網の不通もあり厳しい状況が続いています。

 この状況のなか、いささか旧聞ではありますが、9月12日のTBSラジオ「伊集院光とラジオと」では、伊集院さんが情報をどう届けるかということについてラジオパーソナリティーとしての思いを吐露していました。

『NHKテレビは字幕で給水とかの情報を出している。チバテレビも頑張っている。
でも停電になってるとテレビがなかなか見られない。

ネットはネットで頑張っているけど、スマホが充電できなくて困っている。

いよいよやんなきゃいけないのはラジオだったりするのかな、ラジオは電池で動くものも多いから。
でも現状全然できてないという情けない状況』

 番組オープニングで大体このようなことを話していました。「おまえが言うな」と言われそうなことをあえて話しているのを聴いて、本人も葛藤を抱えて番組を担当しているんだろうなと感じました。話はさらに、民放連が政府(総務省)に要望し、近頃認められた話に及びます。そのあとのニュース解説コーナーで。

『停電のときに情報を届けるのに電池で動く機器を持っている可能性の高いラジオは活躍の場だし、こういうときこそAMラジオの存在意義を見せなきゃいけないけど。
そんななかで、いまAMやめてFMにしようみたいな。
千葉みたいなところに隅々まで情報をいきわたらせようとしたときにAM波の価値は高いのだけれど、こういうことをどう想定しているんだろう。
こういうことを見て考え方を変えたりするんだろうか。
AMは遠くまで届く、FMは細かいところに届く(→鉄筋ビルやノイズの多い都市部のことを指していると思われる) 、そういうはずだったんだけど。』

 どちらもラジオへの愛にあふれる伊集院さんらしい発言だと思います。「災害時はラジオ」などとよく言われながら、いやラジオ局自身もそう言っていながら、こんなことで良いのかと。

 日本の民放AMラジオ局は殆どの地域では県単位のサービスエリアであるのに対し、東京の民放AMラジオ3局は関東一円をサービスエリアにしています。極端なことを言えば他都県の聴取者にとって千葉の給水、停電、スマホ充電、入浴サービスなどの「生活情報」は 直接的には不要な情報であることが生活情報の放送に後ろ向きになっているのかもしれません。またラジオで細かく読み上げていくのは大変なことでもあります。しかし、NHKラジオ第一は関東の周波数では時間を区切って全国向け放送に割り込む形で千葉の生活情報を流しています。昨15日のマラソン実況中継でも実況を中断して流してました。公共放送と民放は違うと言われればそうかもしれませんが、やってやれないことはないのです。民放が「災害時はラジオ」とのスタンスを今後も維持するのか、あるいは放棄するのか、まさに岐路に立っているように私には感じます。

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2019年9月 2日 (月)

防災の日に

 きのう9月1日は防災の日でした。関東大震災に由来するものですが、直接的な災害だけでなく、流言飛語のもたらす人災についても教訓としなければならないだろうと、今年は特に思います。前川喜平さんが東京新聞特報面「本音のコラム」の日曜日を担当していますが、9月1日のコラムは、こう結ばれていました。『九月一日は単なる防災の日ではない。大量虐殺という人災を繰り返さないための誓いの日でなければならないのだ』

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