役に立たないものを作ってみる
「大人の科学マガジン」といえば購買意欲をそそる付録が魅力の雑誌ですが、最新刊は「二挺天符式和時計」ということで、おおっと思って買ってきてしまいました。
機械時計の針は一定速度で動くのが当たり前。しかし、機械時計がヨーロッパから伝わった当時日本で使われていた時刻は夜明けと日暮れを基準とし昼夜に分け、それぞれ6等分する不定時法。季節によっても、昼夜でも一時の長さが違う。。。そのままでは使えない機械時計を、当時の日本の技術者が巧妙なからくりを仕込んで無理やり不定時法に対応させたのが二挺天符式和時計で、ある意味、江戸時代の日本の科学技術の一つのエポックではないかと思います。存在は博物館などで実物を見て知っていましたが、内部機構を知りたくて飛びついたという次第。
付録の組み立てはドライバー一本でサクサクと出来ますが、私は動作をそのつど確認しながら組み立てるのが好きなので2時間近くかかりました。
完成して動かしているところですが、静止画なので分かりにくいですね(^^; 時計の上の、おもりのついた黒い棒が天符と言われるもので、中心を軸に水平方向に20度ぐらい往復運動して針の進みを一定に保つもの。振り子と役目は同じで、おもりの位置でスピードを調整します。昼と夜で一時の長さが違うなら、昼用と夜用の天符を用意して夜明け(明け六つ)、日暮れ(暮れ六つ)で自動切換えにしてしまおうというのが二挺天符式和時計です。
針は時のみの一針式。文字盤が見えにくいですが、十二支と九・八・七・六・五・四の字が刻印されてます。
機構の拡大です。天符の軸についた爪が、大きなギザギザのあるがんぎ車とかみ合いながら、ゆっくり一歯づつ動かしていくのですが、動かさないほうの天符の軸はカムで上に跳ね上げるようになっています。跳ね上げてしまうとがんぎ車と爪のかみ合いが外れて回転がフリーになり、動いているほうの天符だけでスピード制御されます。
さて作ってみての感想ですが、当時の人はよく考えたなーというのが第一印象。しかし、実用性としてはどうなんだろう・・・って感じです。昼と夜で自動的に天符を切り替えるギミックは面白いのですが、天符のスピード調整を昼と夜の2通りやらなければならないわけです。しかも二十四節季ごとに再調整が必要。。。はっきりいって面倒です。
実は当時、割駒式という逆転の発想で機械時計を不定時法に対応させたものもあって、天符は一つで西洋時計と同じ。その代わり文字盤の駒の間隔が調整できるようになっています。これなら天符のスピード調整は一度だけで、二十四節季ごとに駒の位置だけ調整すればよいわけで、ずっと扱いが楽です。実際、こちらの方が広く普及していたようです。
しかし、西洋から入ってきた技術を、ただ真似るだけでなく自分たちのものとして消化し発展させていたことは間違いないところで、技術立国の源流を見たような気がします。
なお、これを作ってもタイトルのとおり実生活では何の役にも立ちません(^^; せいぜい、もうじき日暮れというのが暦を見なくても分かるぐらいでしょうか(あまり意味が・・・)。あとは天符のスピード調整を昼夜同一(春分と秋分の状態)にすれば、現代の時計と同じ動作になりますが、二挺式にした意味がない(微笑)
あ、あと動作中のカチコチ音が大きいです。がんぎ車に天符の爪が当たる音なんですが・・・まあ眠れないほどではありません。。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 快諾の意味するところは(2018.12.30)
- 神田で写真集を(2018.10.31)
- 年の初めに(2018.01.04)
- 午前0時の歌謡祭「河合奈保子リクエスト大会」後篇も終了(2017.08.29)
- 週刊ポスト通巻2427号(2017.05.13)
コメント